日本人は遺骨に宗教的な思いを強くもっています。これは紛れもなく仏教の影響であると考えられます。佛舎利といって釈尊の遺骨を祀る場所に塔を建立し、仏教徒はそれを信仰の対象として崇めています。遺骨そのものに宗教的意味を見出しているといえます。遺体を埋葬しても骨だけは永く形をとどめて地中に残ることが、宗教的にも尊重されることにつながったと云えます。この遺骨を大切にする仏教の慣わしから、私たちは亡き人の遺骨を墓に納め供養することで、宗教的な修養としているのです。
さらに先祖代々の墓の場合、自分が生を受けた遠い祖先に思いを馳せ、今在ることを感謝する拠りどころとなる場所が墓であると云えます。ですから、分家した方が都会に新たに墓所をもとめ墓を建立する場合、故郷の先祖の墓から一握りの土を分けてもらってきて、それを新たな自分の家の墓のカロート(納骨室)に納めることをします。そのことで、自分のルーツを確認し、さらに子孫に伝えることをするのです。いずれにせよ墓は単に遺骨の保管場所としてあるのでなく、深い信仰に根ざした宗教的意味合いを持つものであることが分かります。
|
|